この記事は「ゲームにかかわる人が自由な記事を作る Advent Calendar 2023」参加記事となります。
Playdate専用ゲーム「CRANK and SHOOT!!」を制作・リリースしました!
itch.io、またはPlaydate公式ストア「Catalog」で購入可能です。
ここまで読んで「あー!あのPlaydateでね!リリースしたのね!」と思った人はそう多くないだろうと思う。
ご安心ください。「Playdateって何?」というところから説明させて頂きます。
Playdateってなあに?
それはPanic社が製造・販売している小型のハンドヘルドゲーム機。
2019年に発表され、2021年に予約注文を開始した。私は販売開始当日に購入しようとして、クレジットカードの登録がうまくいかず、ふて寝して翌日にもう一度チャレンジしたら注文に成功したのだが、その時にはすでに予約が殺到していて、結局手に入れたのは2023年の5月頃だった。2年も待ったのか……。
詳細は公式ホームページを見てもらうとして、わかりやすい特徴を列挙するとこうなる。
- クランクがついている
- 画面サイズが400×240ドットで、1ドットには白か黒の2色しか表示できない
- 非常に小さい、そしてかわいい
新しいコントロールデバイス、それは「クランク」
これこそがこのゲーム機最大の特徴であり、過去に登場したいずれのゲーム機にも存在しなかった新要素。
この右側についているクランクをくるくる回すようなゲームが登場するということなのだ!
クランクというのは、過去に発売されたゲーム機には搭載されなかった、いわば歴史のifに埋もれたコントロールデバイスだ。もちろん、釣り体験のおもちゃやアーケードゲーム機のようなものまで探せばあるが、家庭用ゲームハードに搭載されたことはなかったはず。
ゲームの仕様というのは、少なからず流通しているコントロールデバイスの仕様に左右されるところがある。新しいデバイスが登場するということは、今まで発想されなかった、あるいは発想されてもコントローラーの仕様の都合で黙殺されていたような、新しいゲームが作り出される可能性があるということだ。
いや、作ってみたい。そう思わせる何かがある。
画面サイズが400×240ドットで、1ドットには白か黒の2色しか表示できない
この画像の感じから、任天堂の初代ゲームボーイを思い出す人は多いだろう。そこでゲームボーイの画面仕様を調べてみたところ、160×144の4階調モノクロ、なんだそうだ。
表示できるドットの数ではPlaydateの方が多いが、実はゲームボーイは2色ではなく、4色表示できるのだ。みんな知ってた?私は知らなかった。ゲームボーイのゲームも散々やったはずだが、4色あることに気づいてなかった。
つまりゲームボーイとスペック的には似ているが、画像の作り方にはまた別の工夫が必要だし、ゲームボーイとは違ったグラフィック表現を持っている、ということになる。
非常に小さい、そしてかわいい
世の人間は2種類に分けられる。大きくて迫力のあるものに「おおーっ!」と感動するタイプと、小さくて可愛いものに「おおーっ!?」と感動するタイプだ。
私は後者だ。スケールの大きいプロダクトが「どうだ!デカいでしょう!」とやるよりも、小さなものが思った以上の多機能を持っていて、ちまちまと工夫しながら細やかに動いている方が感動するタチなのだ。
Playdateの具体的なサイズは76×74×9mm。手のひらに余裕で収まる。ジョルノなら刑務所からバレずに持ち出すことも可能だろう。
ちょっとポケットに入れて、近所を出歩いて、バスや電車を待っている間に取り出して眺めているだけでも幸せを感じる。大画面・高精細のゲームとはまた違った所有感が味わえる。
プレゼントのようにちょっとずつ届く24本のゲーム!さらに個人でゲーム制作可能!
ゲーム機にとって重要なことは、面白いゲームで遊べることだ。ハードウェアの特徴は全てそれのためにあると言っても過言ではない。Playdateをゲーム機として購入するにあたって心配するところはそこだろう。「面白いゲーム、あるの?」ということだ。
Playdateは手元に届いてセットアップを完了したタイミングから起算して、1週間ごとに2本ずつ新しいゲームが届くようになっている(ダウンロード可能になる)。これが12週続く。従って、Playdate本体を買うだけで24本のゲームが付いてくるということになるのだ。これらのゲームはもちろんクランクをバリバリ使って遊ばせてくれるし、クランクを使わなくても遊べるゲームも用意されている。
また、それ以外にも新たなゲームを購入する手段がある。
- Playdateの公式ゲームストア「Catalog」からの購入
- itch.ioなどで販売・配布されているゲームを導入するサイドロード
これらも含めれば(正直、玉石混交ではあるものの)200を超えるゲームから、自分の好みに合ったものを探し出すことができる。
これだけあれば何かしら琴線に触れるものも1つはあるんじゃないだろうか。しかし、まだ不安が完全に払拭されていない人がいたら、その人の気持ちも分かる。
「いやー……まだ不安だなー……。本当にこれ買って、自分の生活に馴染んで、朝起きて『あー今日もいい天気だなー。あ、Playdateのあのゲームの続き、やろうっと』……って、なるかなー……?」という気持ち。分かる。
任天堂やソニー、マイクロソフトとは違い、まだブランド力の大きくない(特に日本では)メーカーが出したゲーム機だ。発売当初から一足飛びに売れまくる!というわけにはいかない。
そこで!我々のような個人ゲーム制作者の出番だ!好きなゲームがないのなら、作ってしまえばいいじゃないか!
Playdateはゲームを制作する手段が複数用意されている。ブラウザで動作し、マップタイルを敷き詰めながら作る「Pulp」と、コードを書いて作る「Playdate SDK」だ。やはり、Playdateに面白いゲームをたくさん用意するためにオープンにしてあるのだろう。
ゲーム制作者の自分としては、ここまでお膳立てされておいて「面白いゲーム、出てこないかなあ……」などと待ちガイルする気はない。
自分がやりたいゲームがないなら自分で作る。そのためにゲーム制作者をやっているのだから。
というわけで作りました「CRANK and SHOOT!!」
とは言ってもPlaydateでの開発は初めてなので、ここはこぢんまりしたものを1つ、と思い、簡単な主観視点シューティングを作ってみた。
十字ボタンで照準を動かし、Aボタンで弾を発射するというオーソドックスなもの。その代わり、弾がなくなった時のリロードを、クランクを1回転させて行うのだ。
どこかでやったことのあるゲームに、Playdateならではの要素を1つまみ加えることで、入門ハードルを上げすぎずに新しい操作を試してもらう、という狙い。
私はゲーム開発もくもく会というのによく参加しており、このゲーム開発中も開発の進捗をそこの参加者の方に見てもらっていたのだが、「シューティング」で「クランク」という組み合わせから、クランクを回して弾丸を高速連射する「ガトリングガン」のようなものを連想する人たちが続出した。
これだけ言われるのであれば需要があるのだろう、と思い、最後にガトリングガンも実装して完成とした。少々面倒ではあったが絵的にもインパクトがあり、ゲームにメリハリを生むことに成功したので、やって良かった。
これからもやっていくよ!
売れる売れないの話を少しだけすると、Playdate向けのゲームを作ってものすごく稼げるかと言ったら、そんなことはないだろうなと思う。
なにしろ、この記事執筆時点で世界で流通している数が60000台弱だ。ビジネスにするには市場が小さすぎる。
潜在顧客の数で言えば、スマホゲーム市場がダントツで大きいだろう。Steamを舞台としたPCゲーム市場も市場が大きい。
だからゲームを通じてビジネスをやりたい人は、Playdateでゲームを作ることはオススメしない。
私は、ゲームを通じて何かを壊したいのだろうと思う。今まで疑われていなかったものを疑わせてみたり、考えたことのないものを考えさせてみたり。
そういうことができるポテンシャルを、Playdateは持っていると思う。