マジック:ザ・ギャザリングで好きなカード3選

MTGプレイ風景

マジック:ザ・ギャザリング(以下、MTGと略します)とは、1993年に世界で初めて発売されたトレーディング・カード・ゲームだ。もうすぐ発売から30年が経過しようとしているにもかかわらず未だに新セットが開発され続け、世界中の人々に遊ばれ続けていることでギネスブックにも登録されている、歴史あるカードゲームである。

どういう趣向のゲームなのかだけ簡単に説明しておくと、「魔法」を模したカードがいろいろある。それを集めて自分の魔法書である「ライブラリー」(これが一般的にデッキと呼ばれているもの)を作り、自分のライブラリーから得られる魔法カードを使って、対戦相手と戦うというものだ。

実はこのゲーム、私も細々とプレイしているのだ。

出会いはおそらく中学生の頃だったのではないだろうか。
日本で発売されたのは1995年の第4版だと言うが、私が出会うのはもう少しあとの話だろう。もうその版の名前が何だったかすら覚えていない。

MTGはルールがそれなりに複雑で、しかもコンピュータゲームと違って全ての処理をプレイヤーが判断して行わなければならない。そのため、当時中学生だった我々には正しくプレイするのは難しかった。
それでも分からないなりに友人と対戦したものだ。

それが続いたり途切れたりして、今いろいろな縁があり、月に1回ほどのペースで実カードを使った(つまりスマホやPCソフト版ではなく)プレイングの会に、夫婦ともども参加させて頂いている。

ゲームルールを細かく紐解いていけば、対戦ゲームとしての面白さを構成している要素はいろいろある。そして同時に、トレーディング・カード・ゲームというジャンルがはらんでいる問題もいろいろと論ずることができるだろう。

だがこのMTGには、そういった奥の深いゲームシステム論をする以前の部分で、「このゲームをやってみたい」と思わせる魅力がある。
思えばそれはどんなゲームにもあるものだろうし、新たなゲームが開発される際に重視されるべき要素の一つでもある。

ゲームの仕組みがどうなっているか、どのようにしてプレイヤーに継続的に遊んでもらうか。
そういう話ももちろん重要だがそれ以前に、まだゲームを遊んでいないプレイヤーに対して「このゲームを遊んでみたい」と思わせる趣向なり、説明なり、世界観なり、そういった部分にも我々個人開発者は意識的になるべきなのだろう、と思うのだ。

今回はMTGのゲームデザイン論的な話ではなく、まだプレイしていない人に対して訴求するような、このゲームの魅力であるカードのデザインについて書いてみよう。

という体裁で、私が好きなカードを3つ紹介する。
私の言う「好き」は、カードの強さやゲーム的な有効性はあまり重要視していない。
それよりも、そのカードの要素として持っている名前、イラストなどから醸し出される世界観のようなものを重要視している。

第3位 <ミラーリ予想 / The Mirari Conjecture>

ミラーリ予想
これは私が所有して飾っている、<ミラーリ予想 / The Mirari Conjecture>の英語・Foil版のカードだ

このカードは歴史あるMTGのカードの中でもちょっと変わった、「英雄譚」と呼ばれる種類のカードである。
簡単に言うと、使用したあと時間をかけて物語が進んでいき、その物語に応じて一定の効果を発揮する、という処理を引き起こす。
I, II, III と表示されているところに書かれている文章が、その処理を説明しているわけだ。

「英雄譚」というだけあってこの種類のカードには、何らかの物語や戦記を模した名称をしているものが多い。
<霜と火の戦い / Battle of Frost and Fire>、<天空に到る母聖樹 / Boseiju Reaches Skyward>、<啓蒙の時代 / Era of Enlightenment>、などなど。
名前しか紹介していないが、想像力の豊かな方ならこの名前だけで壮大な物語の展開を予感するのではないだろうか。

そのような英雄譚タイプのカードにあって、精神や探求を司る青のカードの1つとしてリリースされたのが、この<ミラーリ予想 / The Mirari Conjecture>である。

もう名前を読んだ瞬間に私にはビビッときた。「予想」がポイント高い。
数学の世界には「〜〜予想」という名のついた未解決問題が多い。P≠NP予想、リーマン予想、ポアンカレ予想など。
つまりこれ、そういった「数学的な問題」をモチーフにした名前になっているのだ。

少しストーリーについて触れておくと、もともとMTGの世界に「ミラーリ」という魔法的現象があった。(実は<ミラーリ / Mirari>という名前のカードも存在している)
このミラーリが引き起こす現象について、学者たちが影響・効果を調査する物語がこの<ミラーリ予想 / The Mirari Conjecture>なのである。

イラストは地図になっており、ミラーリが災厄をもたらした場所を示しているのだ。
いかにも研究者たちが壁にデカデカを貼り付けていそうではないか。
たまらん。

第2位 <稲妻 / Lightning Bolt>

稲妻
これも私が所有して飾っているカード。プロモ版で効果の説明文章がなく、イラストがでかでかと描かれておりかっこいい。公式戦に使用することも認められている

これはMTGの世界では非常に有名なカード。
昔ある選手がこれを手札から4枚使用して勝利したことがあり、そのマッチともども伝説的に語られている。

このカードを私が気に入っている理由は大きく2つある。
1つは、イラストの美麗さだ。これはもうこれ以上言葉で語ることがない。ずっと眺めていられる。

もう1つは、名前と効果のシンプルさである。
先に掲載したプロモ版ではなく、基本セット2010の通常版のイラストがこちら。

公式ホームページより(https://mtg-jp.com/products/card-gallery/0000040/191089/)

名前が「稲妻」、効果が「クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。稲妻はそれに3点のダメージを与える。」である。さらにコスト(カード右上のマーク)が1つしかない。

版を重ね、新たなカードが考案され続ける中で、強力なカードの文章が長大になっていくのはある意味仕方ない流れではある。
そんな昨今、このようなカードがシンプルであるが故に評価されるということが起こっている。
そのようなカードが大会で活躍すればなおさらだ。

最も、シンプルという点で言えば<滅び / Damnation>も見逃せないカードだ。
私が青赤ではなく黒の信奉者であったなら、間違いなくこのカードがランクインしていたことだろう。

公式ホームページより(https://mtg-jp.com//img_sys/cardImages/PLC/141612/cardimage.png)

第1位 <煮えたぎる歌 / Seething Song>

こちらは実物を持っていないので公式HPから画像を引用する(https://mtg-jp.com//img_sys/cardImages/9ED/99423/cardimage.png)
買おうかなあ

「煮えたぎる歌」である。
煮えたぎるのだ。歌が。

これは完全に名前にやられてしまった。(ここまで読んだ方ならお分かりの方も多いと思う。私は『名前』というものに対して妙なこだわりがある)

まずこれは「歌」なのである。それは分かる。
ではどういう歌なのか?
通常であれば「楽しい」「悲しい」など想起させる感情を表したり、「テンポの早い」「ゆったりとした」のように音楽としての構成を指摘する言葉を加えるだろう。
言葉が悪くて申し訳ないが、それは凡夫の発想である。

このカードを考案した人は、この歌を「煮えたぎる」のだと表現した。

普段何を食べていたらそんな発想が出てくるのだろうか?
歌を形容する言葉に「煮えたぎる」を持ってくる、その気づきに脱帽である。

このカードもまた、先の <稲妻 / Lightning Bolt>や<滅び / Damnation>のように、シンプルなかっこよさを持っている。

フレーバーテキスト(ゲームルールとは関係ない、世界観を表すテキスト)も良い。

最も熱い炉から最も清純な鋼が生まれ、最も暗い嵐から最も明るい稲妻が生まれる。

――チャールズ・コルトン

もう1つ、このカードが私を魅了して止まない理由として、「効果の優秀さが分かりづらい」ということを挙げておこう。

実はこのカード、ゲーム的にも非常に強力なのだ。
だがテキストを読んだだけで「強いね」と分かる人は、MTGのプレイヤーでも多い方ではない。
このカードはある特定の戦術(それを想定して作ったライブラリー)において、カードを使用するためのリソース(「マナ」と呼ぶ)を短時間で大量に供給するという役割を持つ、非常に強力なカードなのである。
ゲームのレギュレーションによってはこのカードが禁止されている場合もあるくらいだ。

この「強いのだけど、その強さが理解されづらい」というのがとてつもなくソソるのだ。
分かってくれる人は多いんじゃないだろうか。
「この強さに気づいているのはオレだけだ」感である。
「彼女の可愛さに気づいているのはオレだけだ」みたいなのに似ている。
レアリティが「コモン」という最低ランクに属しているのもポイント高い。

思えばこの感情、近年のなろう系小説によくある「弱いと思われているスキルで無双する」が気持ちいいという構図に似ていないだろうか?
誰もが見向きもしなかった戦術を使いこなして周りとアッと言わせる、というタイプのカタルシスなのだ。

MTGはなろう系もできる

私、なろう系小説は読んだことがないのでヘンなことを言ってるかもしれないが。
よく考えると私がMTGをやる楽しみの一つに、「他人が使わないカードを使って戦えるライブラリーを考える」というものがある。

強力なカードや戦術についてはプロプレイヤーの方々がものすごいスピードで研究していくので到底追いつかないわけだが、一方でその流れに見向きもされないカードが毎回出てくる。
それらのカードになんとか日の目を見せてやれないだろうか?と思うわけだ。
そしていつしか、誰も見向きもしなさそうなカードを探し回っている。
私はなろう系小説の主人公をやりたくてMTGをやっているのかもしれない。

同志をお待ちしております。

これは<空虚への扉 / Door to Nothingness>。
実際に私がこれを使ったデッキ製作に挑戦した思い出深いカードである。
フレイバーテキストでも指摘されている通り、強くもなんともない。
だがそこがいい
(引用元 https://mtg-jp.com//img_sys/cardImages/M13/332953/cardimage.png)
最新セット「団結のドミナリア」のプロモーションとして、品川駅校内にアートギャラリーが特設されているそうだ。
2022/9/2 〜 2022/9/11 とのこと。
写真だけ見ていても美しい……。
品川駅へお立ち寄りの際はぜひどうぞ
(引用元 https://mtg-jp.com/reading/special/0036259/)

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