カスタムシューターのゲーム性 – 「弾幕」を捨てる

まず最初に「ゲーム性」などという定義の非常にあいまいな言葉を使ってタイトルを付けてしまってすみません、と謝っておきたい。タイトルはできれば短めにしたいのでこうなってしまった。

この言葉はゲーム開発界隈で非常に多く使用されている反面、使用者と受け取る側で言葉の定義が正確に共有されていないばかりに無用な議論を呼んでいる印象があり、あまり軽々に使いたくはないなあと思っている。

なにが正確な定義かはここでは議論せず、私の話で使う意味だけ提示しておきたい。
ここではゲーム性を「プレイヤーがゲームを遊ぶ時に考える必要がある内容と、その深さ・強度」という意味で使用したいと思う。ゲーム製作側の視点で言うと「このゲームを進めるためにプレイヤーに要求する思考や技術」のことである。

例えばドラゴンクエストならボスを倒すためにキャラクターを育てる時にどう育てるか(育成の方向性や、育成の効率化など)であるとか、ダンジョンを探索する時にどの順に道を進むべきか考える、のようなプレイヤーの思考や工夫の余地を指して「ゲーム性」という言葉を使いたい。

その上で、カスタムシューターを製作するにあたってのゲーム性、つまり「何をプレイヤーに工夫させるのか?」という話をしようと思う。

2Dシューティングゲームの高難度化と「弾幕シューティング」の氾濫

カスタムシューターは縦スクロール型の2Dシューティングゲームだが、「2Dシューティングゲームを作りたい」という発想から作り始めたものではない、という話は以前の記事で書いた。
このゲームはまず「プレイヤーがコントローラーを作るゲームを作る」という発想から始まり、その後ゲーム性が浸透しているという理由で2Dシューティングゲームになった、という経緯を辿っている。

(以降、「2Dシューティングゲーム」を略して「シューティング」または「シューティングゲーム」と書くことにする。本来ならば3Dシューティングやアクションシューティングとの区別をすべきだが、文章が冗長になるためこの記事ではそうするので、ご了承ください)

また同様に以前の記事で、私はあまりシューティングゲームを好んでプレイしない、と書いた。
そして、「どうして自分がシューティングをプレイしないのか?」「どうなっていればシューティングをプレイしようと思うのか?」という考えを進めて、カスタムシューターのゲーム性を作っていこうと考えた。

ではどうして私がシューティングをプレイしてこなかったかというと、一言で言えば「難しすぎるから」である。

無数と思えるほど出現する敵や敵弾、それに一度でも当たればミス、そして場合によってはステージの最初(あるいはいずれかのチェックポイント)に戻され、多くの作品ではそれまでに得た自機のパワーアップを剥奪される。
特にこの「1ミスで自機のパワーアップを失う」という要素が大きいように思う。ただでさえ出現するボスは強いのだから、可能な限り大きくパワーアップした状態で挑みたい。しかしボスは強いのでやられてしまう。そしてやられると再戦時にはパワーアップを失っているわけだが、最初の状態で倒せなかったのだから再戦で倒せる可能性があるとは到底思えない。
かくしてこのようなシューティングゲームでは、最初の1回だけが最大の攻略チャンスであり、残りはオマケというかほぼギャンブルのような気分でプレイさせられることになる。
昔であればいざしらず、現代においてこのデザインが良しとされる理由がいまいち私には理解できないのだ。

シューティングゲームが高難度である理由は、このジャンルが流行していたアーケードゲームの時代に端を発するように思う。
アーケードゲームは「1プレイ100円」のように、1プレイあたりに課金される仕組みだった。それがゲームセンターによっては1プレイ50円とか2プレイ100円のようなサービス店舗があり、ゲーマー達はそのような店舗を探して回ったと聞く。

つまり店側や、ひいてはゲーム開発・販売側の視点から考えると、プレイヤーに簡単にクリアされてしまうということはクリアまでの必要プレイ回数が少ないということであり、それはゲームの開発費や購入費を回収できなくなるリスクにつながるのだ。
ゲームを難しくすればクリアのために何度もプレイする必要があり、そのために課金額が増え、ゲームの開発費や購入費用を回収できる可能性が高くなる、というわけである。
簡単に書いてしまったが、他にも言える事情はあれど、このような要素はシューティングゲームの高難度化に大きく影響していたのではないだろうか。

そしてシューティングゲームを高難度化する最も簡単で効果的な方法は、敵弾の数を増やすことである。
シューティングゲームは一度でも敵弾に当たるとミスになるが、逆に言うと一度も敵弾に当たらなければ延々とプレイし続けることが可能である。
つまりシューティングの高難度化のためには、(ほぼ)避けられないほど大量の敵弾を生成する、という話になってくる。

かくして生まれるのが「弾幕」という考え方だ。
ゲームの高難度化のためさまざまな弾幕が考案され、新たなシューティングゲームがリリースされるたびにその弾幕の密度を謳うような文化さえ生まれ始めた。
正直に言うと、当時私はそのような風潮を、少し冷ややかな目で見ていたように思う。

その後、弾幕はその幾何学的な美しさに注目され、「美しい弾幕」という新たな価値観を獲得し、それが多くの人々の支持を得て「弾幕シューティング」というジャンルが生まれることになる。
また見た目に派手で演出に技巧が凝らされた作品も現れるので、プレイしていない人も他人のプレイや上手いプレイヤーの動画を見て楽しめる、という利点もある。

それ自体は喜ばしいことと思う。
弾幕シューティングの世界は、私が入れないというだけで、楽しんでいる人が大勢いるのだからそれで良いだろう。

だが私は同時にこうも思う。
シューティングの進化の方向性は弾幕だけなのだろうか?と。

コントローラーのカスタムによって攻略するシューティングを作る

今回私は「コントローラーをカスタムするシューティング」を作ろうとしている。
そしてそのために、「コントローラーをカスタムすると攻略が有利になるようなステージの仕組みや難易度の表現」が必要になった。

それを考えた時私は「このゲームにおいては、弾幕で難易度を上げるのはやめよう」と考えた。
先述のように既存の弾幕シューティングを私が楽しめないから、ということもその理由の一つではあるが、もう一つ大きな理由がある。
それは、「コントローラー(つまり自機の性能や機能)をカスタムしたから弾幕回避がラクになります」というゲーム性だと、プレイヤーが工夫する余地を多くは作れないだろうと思うためだ。

弾幕は敵が出すものなので、自機のカスタムで敵の弾の数が減る、なんて話には正直リアリティがない。世界観設定でそういう話にすることは可能ではあるが、無理にその方向に持っていってゲームが面白くなるようには私には思えなかった。
例えば自機の移動スピードをコントロールして敵弾の隙間を移動しやすくする、みたいなことはあり得るだろうし、そういうパーツは実際にカスタムシューターに実装している。
ただ、これだけでシューティングゲーム全体の遊びや仕掛けのバリエーションを確保するのは難しいだろう。

それであればいっそ弾幕という要素を捨ててしまい、それとは違うゲーム性を新しく追求する方が良いのではないか、と考えたのである。

以上のように、「コントローラーをカスタムするゲームである、というゲームアイデアの都合」と「私の弾幕シューティングへの個人的忌避感」ががっしりと手を組み、カスタムシューターは弾幕シューティングとは異なるシューティングゲームの可能性を探って開発することとなったのだ。

弾幕を使用せずどうやってシューティングゲームとしての難易度を出すか?

弾幕を使用しないということを考えた際、もう少し具体的にこのゲームでやらないことを決めた。

  • 画面に現れる弾の数を増やして難易度を調整することを極力しない
  • 理由もなく敵弾を横方向やステージ後方から出現させない

これらの制限のもと、シューティングゲームを作ることになる。
そして「コントローラーをカスタムすることで攻略するゲーム」を作るのだから、攻略が必要になる難易度を作り出さなければならない。

弾幕を使用せず難易度を上げる。これがカスタムシューター製作における次の課題だった。
この課題に対してどのような考えで製作しているのか、また改めて記事にしたいと思う。

最後に

ながながと私のシューティングゲーム観について書いたが、お断りしておかなければならないことがある。
何度も書いているように私はあまり積極的にシューティングをプレイしていないので、過去にリリースされていて私が知らないゲームの中には、この記事で書いた内容に当てはまらないシューティングゲームが既に出ている可能性がある、ということだ。

簡単に言うと「シューティングゲームは難しいのばっかじゃん!と書いてるけど、こういうのもあるわ!!」というご意見があるだろうなということである。
そこはごめんなさい。さすがに私も全部のゲームをプレイすることはできないので、網羅的な話はできない。

もしそういう感想を持った方は、ぜひ私にシューティングゲームを紹介してください。

参考までに、私がプレイしたことがある2Dシューティングゲームと、どの程度までプレイしたかを列挙しておく。
見ればわかると思うが経験が少なすぎる。

  • FC「グラディウス」(モアイのところくらいまで行った気がする)
  • FC「ゼビウス」(最初のアンドアジェネシスすら倒せない……)
  • FC「ツインビー」(最初のボスを倒したかな?くらい)
  • SFC「R-TYPE」(わりとがんばってたがクリアまでは到達せず)
  • MD「スーパーファンタジーゾーン」(これはつい最近クリアした)
  • PC「東方花映塚」(唯一の弾幕系。一応クリアした気がする)
  • PS4「ステレデン」(かなり楽しんだがクリアは叶わなかった)
  • Switch「Black Bird」(ノーマルモードはクリア、トゥルーモードはクリアできず)
東方花映塚ディスク
所持している東方花映塚のディスク。起動して画面ショットを撮ろうと思ったが、なぜか下が入力され続けてまともにプレイできなかった……

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